テスラの株価がようやく上方向へ動き出し、ずいぶん待たせやがってと思いながらも温かく見守っている今日この頃ですが、打倒テスラとばかりに次々と株式市場に現れた新興EV株は今どうなっているのでしょうか?

これまで取り上げたニオ(NIO)、ニコラ(NKLA)、ローズタウン(RIDE)に加え、フィスカー(FSR)やシャオペン(XPEV)なども気になりますし、最近上場を果たしたルシード(LCID)、香港上場を控えるLi Auto(LI)なんかも注目ですよね。

そこで今回は上場後のそれぞれの企業の評価を簡単に書いていきたいと思います。

中国のテスラ、ニオ(NIO)

NIOのフラッグシップセダンET7

中華EVのNIOはテスラを超えるか・前編

中華EVのNIOはテスラを超えるか・後編

中華EVのNIOはテスラを超えるか・最終話

NIO株価推移・年始終値53.49→7月末終値44.68(★★★★☆)

NIOの8月3日時点での終値は44.57ドルで、先月半ばに55ドル付近まで到達してから約20%近く下げたことになります。一方、NIOは他の中国企業同様チャイナリスクに注意すべきですが今のところ非常によくやっていると思います。新興EVメーカーとは言っても、NIOの場合はテスラと同じく既に出荷数を順調に伸ばしており、黒字化はまだだとしても莫大な開発資金で資産を食い潰すことなくキャッシュフローを生み出しています。NIOのレポートによれば、

2021年7月に前年比124.5%増加となる7,931台を納車

2021年7月末時点でES8、ES6、EC6の累積デリバリー数は125,528に達する

NIOニュースリリース

となっており、優れた製品を生み出し商売は順調で資金面にもまだ余裕があり、半導体不足さえ解消されれば出荷数はさらに加速する、というところでNIO株の将来性はある程度見えてくるはずです。もう一度言いますとチャイナリスクにさえ目を瞑れば投資先としては極めて大きい魅力があると思っています。

詳しくは上に貼ってあるリンクをご参照ください。

ニコラ(NKLA)は引き続き厳しい状況

FCEV(燃料電池電気自動車)セミトラックのTRE

ニコラは次のテスラなのか

NKLA株価推移・年始終値16.08→7月末終値11.87(★★☆☆☆)

上の記事を書いた6月半ばにニコラの株価は18ドル台に乗せ一時の危機を脱出したかのように見えました。しかし7月を目の前にしてからほぼ丸1ヶ月下落基調にあり、昨日の終値では収益改善のレポートが出ているのにも関わらず一桁台にも手が届きそうな10.21ドルと散々な状況です。この下落の原因はわたしが書いた上のリンク先で程よくまとめて解説していますので短い時間でご理解いただけるはずです。

6月末頃から大きく下げ続けている

NKLAの将来が非常に困難なものになりそうな理由はいくつかありますが、まさに現時点での理由としては創業者トレバー・ミルトンの詐欺疑惑、そして開発を進めるための現金枯渇問題、サプライチェーンの未熟さによる調達の遅れなどでしょうか。実はニコラについて最初に書いたとき、トレバー・ミルトンについてズバリ詐○師だと書いていましたがその後このブログにアメリカからのアクセスが急増しているためいろいろ考えて遠回しの表現に変えました。ミルトンは当然無罪を主張しているものの、もし有罪になった場合懲役25年の実刑となる可能性もありいずれにせよ今後ニコラの経営に直接間接問わず関わることはほぼないでしょう。

ニコラはこの株価でも依然40億ドル以上の市場価値を持つ中型株で、EVやFCEVという大きなテーマを持つ銘柄でもあり市場から完全に見放されたわけではありません。実際様々なメディアで「ニコラはいつが買い時か」という記事を見かけることがありますが、NKLA株について投資する側から語るとすればチャートを見てテクニカルな判断をするよりも成長性が持続できるかどうかに絞ったほうがいいのではないでしょうか?

過去の記事ではわたしならこの会社には絶対に投資しない、などとホルダーの方が読んだらブチ切れそうなことも書いていますが、なかなかセンスの良いものづくりを感じるところもありできれば他社に買収されて生き残ればいいのに、と願っています。

ローズタウン(RIDE)は早くも正念場を迎える

ローズタウンの街の未来がかかるが

資金不足のローズタウンに救いはある?

資金不足のローズタウンに救いはある?その2

資金不足のローズタウンに救いはある?その3

RIDE株価推移・年始終値20.38→7月末終値6.24(★☆☆☆☆)

2020年10月にSPAC上場を果たし、それからわずか半年で現金が枯渇しかけていきなり大ピンチに陥ったのがローズタウン・モータースRIDE)。創業者のスティーブ・バーンズは既に退任し、後任の経営陣により事業が進められているところです。RIDEの株価を見てみると説明の必要がないほど打撃を受けていることがわかります。詳しくは上のリンクから記事を3つ読んでいただければわかるはずです。ちなみに株価は昨日の終値で5.92ドルと上場来最安値を更新中。

この会社の問題は、未だ車両の生産がスタートしていないところにあります。生産が予定されている唯一のピックアップトラックENDURANCEは、製造ができるのかできないのか、というレベルでの推測が行き交っており、RIDE側は今年9月には製造を開始して来年5月頃には累計15,000台~20,000台を生産していると目論んでいるものの明確な根拠らしきものはまだ見えてきません。

ところがここへきてニュージャージーにあるヨークビル・アドバイザーズがケイマンで設立したヘッジファンドYa Li Pn, Ltdが株式により向こう3年間で最大4億ドルを支援する契約を締結したという情報がリリースされ、一時的に株価は上昇しました。4億ドルとはまたとんでもない金額ですが、「最大」4億ドルと発表されていることからまだ不透明な部分が残されていますし、この発表が行われた7月26日にRIDE株はいったん上昇した後に結局元通りずるずる下落を続けています。最大4億ドルもの支援を約束した(しかも最終的に上限額はなく、直ちに株式を売却することもないと公表されている)ファンドですから主導権はもはやファンド側にあると考えられ、投資額はそれほど大きくせずに生産に必要な最低限の資金を投下した後に他社の傘下に入るなど別の枠組みを模索しているのではという気もします。

ローズタウンにはまだまだ厳しい状況が続きますが、破綻するにしては設備や仕組みが大きくなりすぎていますし、なにより上場後まだ1年も経過していないこの時期にギブアップするとは思えません。生産開始を目の前にして適切な燃料が投下されれば一気に打ち上げ成功となる可能性も残されています。また株価はべらぼうに安く、わずか6ドルの上昇で資産価値がほぼ2倍になることを思えば投機的なチャンスは大きいとも言えますね。

補足として、ローズタウンの記事中、業界の常識として「EVメーカーは立ち上げに最低でも10億ドルかかる」というようなことを書いていましたが、これまで調査した情報を集約してみると10億ドルぐらいでは全然足りないということになります。ですが仮に新興メーカーが20億ドルを調達できたとしても、その10倍以上の資金力を持つテスラや、500億ドルを超える規模の余力があるトヨタなどと本当に勝負できるのでしょうかね。

さて、この続きは次回の記事とし、これまで取り上げてこなかったいくつかのメーカーにも触れていきたいと思います。

→新興EV株、今年前半の成績は?・後編

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