前の記事ではニオ(NIO)、ニコラ(NKLA)、ローズタウン(RIDE)について書きました。今回はXpeng(XPEV)、Li Auto(LI)、ルシード(LCID)、そしてフィスカー(FSR)について取り上げてみたいと思います。

攻勢をかけるXpeng(XPEV)

洗練された佇まいのミドルクラスセダンP7

XPEV株価推移・年始終値44.10→7月末終値40.53(★★★★☆)

ニオ、Li Autoそして王者テスラとしのぎを削るXpeng(XPEV)は海外向けのカタログモデルがコンパクトSUVのG3とミドルサイズセダンのP7というシンプルな構成でその他のモデルの知名度は低いですが、中国国内のセールス面では既にある程度の成功を収めてきています。ちなみにあまり役に立たない知識ですけども、日本語表記でシャオペンとされている社名「小鵬」は本来の発音からいえば「シャオポン」のほうが近いです。シャオペンでもシャオポンでも若干気の抜けたような名前のようには感じますが。

直近の情報で注目すべきなのは、7月のセールスでついにニオを初めて上回ったという点。ニオが半導体不足により生産スピードを落とした間に、Xpengは値下げもうまく利用して一気に販売台数を獲得しました。この経緯はなかなか熾烈なもので、No.1メーカーであるテスラのモデルYが値下げしたことでニオの販売が鈍り、さらには中国製モデル3の値下げによりXpengが対抗措置として中国市場モデルであるP5の価格をかなり戦略的に設定したことで連鎖的にXpengにユーザーが流入することになりました。

その結果、7月のニオの販売台数が前年比125%増の7,931台であったのに対し、Xpengは前年比228%増の8,040台を計上、6月から22%もの販売増加を記録してひとまずニオを超えることに成功しました。

株価についてですが、他のEV銘柄の例と同じく上場後急上昇したものの時間の経過とともに下落し、今年1月から半年経った現在株価は年明けとほぼ同じ水準にあります。その間一時期20ドル前半まで落ち込んでいたことを考えるとかなり健闘してはいますが、販売台数の増加がテスラやニオを意識した強気の値下げと相変わらずの補助金頼みであることは否めず、上には★4つとなっていますが個人的には安心して投資する気にはなりません。

昨日の終値42.75(赤丸)は1月4日の株価44.10とほぼ同水準

自社開発のLiDARを実装した自動運転が可能とされるP5のデリバリーが始まるのが今年の4Qからですので、それまでの販売状況の安定性とP5の完成度(あるいは以前から公表してきた通りL3以上の自動運転を本当に実現しているのか)、これが次の鍵になってくるのではないでしょうか。

参考までに、Xpengの搭載するLiDARは中国のLIVOX社製で、LIVOXはドローンで有名なDJIのオープンイノベーションプログラムにより2016年に創業したLiDAR専業メーカーです。LIVOXのLiDARセンサーは150メートル先まで検知するとされていますが、メーカーによると「検知範囲は150メートルに達する可能性があります」という謎の説明がなされています。

最後になりますがXpengは6月に香港上場で21億ドルを調達しており、資金的に余裕があるのは相当大きな安心材料です。これで今後充実していく予定のADAS自律運転周りの技術開発に相当な額の投資を実行する余力が備わりました。販売実績、決算内容、資金問題についてはいずれもクリア、逆に心配するべきなのは中国当局の規制などのチャイナリスクです。

EV単一モデルながら売上を伸ばすLi Auto

中国語で理想汽車という名前のLi Auto。その唯一のEVはONEと呼ばれるミドルサイズのSUVモデルです。下の写真を見ただけではわかりませんが、リアのデザインなど詰めが甘くディティールの完成度には欠けるというのが正直な感想。

理想ONE、デザインは寄せ集めだが「一見」よくまとまっている

年始終値32.46→7月末終値33.39(★★★★☆)

Li Autoがナスダックに上場したのは今からちょうど1年ほど遡った2020年7月で、上場時の株価は16.46ドル。11月に43.96ドルの高値をつけたあとは他の新興EV銘柄同様徐々に値を切り下げて17.01ドルと上場時の株価に迫り、現在はそのほぼ2倍の株価がついていることを考えるとニオと競合するだけあってセールスを成功させることでしっかりと踏みとどまっている感があります。

1月4日と7月30日でほぼ同水準の株価

株価は5月半ばに一旦底打ちしたあと今の所3ヶ月に渡り上昇局面にあるように思えます。7月のセールスが絶好調だったことから後半に急落していた株価を月末急激に戻す強さも見せています。

今後の株価についてですが、LIが非常に有望だと思える要素として

  • 過去2Qの決算内容は好調
  • 販売台数の急激な伸び
  • 香港市場でのIPOにより15億ドルを調達

リスクとして捉えておくべき要素として

  • 中国政府による規制強化
  • VW、フォードの競合車発売によるさらなる競争激化

などがありますが、これはPros/Consいずれも上に書いたシャオペンとほぼ同じ内容、同じ要素ということになるでしょう。わたしの見解としてはチャイナリスクを脅威とみなさないのであれば中期的には投資価値があると思います。そしてこのまま順調に行けばXPEVもLIも遠くない将来今の10倍の株価に達するだろうと考えていますが、わたしはこれらの会社に投資するつもりは全くありません(理由?チャイナリスクが怖すぎるからです。どうしてもわからない方は一度中国でビジネスやってみてくださいって)。

2回目で終わらなかったので新興EVメーカー編は3回目に続きます。

→新興EV株、今年前半の成績は?

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