インディ500が開催されることで広く知られているアメリカのインディアナポリス・モーター・スピードウェイで、まもなくドライバーなし、完全自律走行のレーシングマシンのみという画期的なレースIndy Autonomous Challengeがスタートします。とはいっても実際にこのプロジェクトが始まったのは今から2年前。9か国の21大学が9チームを結成し、100万ドルの賞金を目指してマシンの開発やセッティングに取り組んできました。IACは事実上かつて行われていたDARPAグランドチャレンジの後を継ぐコンペティションとされています。Velodyneの創業者David Hallがグランドチャレンジに出場するためLiDAR開発に身を投じる事になったのは有名なお話。

言うまでもなく超優秀な学生ばかり

インディのオーバルコースは全長約4km、インディ500では平均速度が400km/h近くにも達する超高速レースとなりますがさすがに今回のレースではそこまでの速度とはならず、それでもドライバーが搭乗しないマシンで290km/hまたはそれ以上での高速運転を想定していると言うのには驚きます。

テスト走行中ですが220km/h出てるそう!

当たり前でしょうけど思ってたより速いですね。これは期待できそうです。

車両はイタリアのダラーラ製
Indianapolisはアメリカのここ

当然レーストラックで行われる競技ですからどれだけ速く走りフィニッシュするかが注目されますが、実際に重視されているのは自律運転に関わる技術そして安全性の向上とアピールとなります。実は現在では法律で装着が定められているバックミラーは1911年(なんと、第1回目のインディ500)に、シートベルトは1922年、4WDは1932年に量産車に搭載されるより前にインディ500でデビューしました。革新的技術の安全性を確立するために超高速域でのテストを行うことは量産化への重要なステップになりうる、というわけです。110年も前にはバックミラーの装着さえ先進的であったとは面白いですね。

スポンサー企業

シスコシステムズ(NASDAQ:CSCO)メインスポンサー。説明するまでもないですが売上高500億ドル、世界最大のネットワーク機器メーカー。何十年も自宅、会社でシスコ製品のお世話になっています。

アンシス(Nasdaq:ANSS):工学シミュレーションソフトウェアのトップブランド。流体力学解析などは自動車メーカーもたくさん採用していますね。

ブリヂストン:日本からもおなじみの企業がスポンサー参加しています。ブリヂストンは売上高3兆円以上、ミシュランと並び世界最大級のタイヤメーカーです。2018年までは11年連続売上高世界一でした。ミシュランがM&Aで売上を急激に伸ばし2019年に逆転しています。

アドリンク:台湾のICT機器メーカー。日本には東京と名古屋に営業拠点あり。

ヘキサゴン:センサー、ソフトウェア、自律型ソリューション開発。スウェーデンのストックホルムに本社を置き世界50カ国に展開する世界最大の測定機器メーカー。

インテル(Nasdaq:INTC):今回は車両(ダラーラAV-21)のスポンサーとしての参加だそうです。

ルミナー・テクノロジーズ(Nasdaq:LAZR):LiDARのトップブランドとしてLiDAR製品Hydraを供給。

その他:マイクロソフトニューイーグルPWRバルボリンRTIシェフラーなど。

The LiDAR Wizard

LuminarがLiDARについて学生の一人にインタビューした動画がリリースされています。アトランタのやや南にある州立のオーバーン大学の学生です。チーム名はAutonomous Tiger Racing。

Stephanie MeyerはLiDARについての論文も残している”LiDAR Wizard”

この取り組みは単にレースに出るということではなく実社会における自律性確立のためでもあります。

LiDARをやり始めて4年になります。LiDARは周囲の環境から最高の深度情報を得られます。(中略)ルミナーのように多くの情報が得られると「おお、これは人が座ってる」というようなことがすぐわかります。また、ルミナーのパラメーター設定作業は素晴らしいです。自動運転のレースカーがものすごいスピードでトラックを走り抜けるのを見て人々は興奮するでしょうし、そうなれば道路で走るようになることも信じられるようになるでしょう。わたしも自動運転車がほしいし自分の車にも自分でプログラミングしたLiDARをつけてずっとモニタリングしてみたいです。

当然ながらレース直前ということもあるのか肝心な技術内容などには触れられず、どちらかというとかなり抽象的な話しだったのでそれほど参考になるわけではありませんが、優秀な学生たちがこんなに先進的な取り組みに参加し、チャレンジできるというのは素晴らしいことですよね。そしてステファニーがインタビューで結構自信たっぷりなのも印象的でした。

Hydraが3台載ってます

実際のレース自体は日本時間で24日の午前2時、現地時間23日午後1時スタートとなります。Twitterの方にも書いたのですが様々なスポンサー、サプライヤーの協力があってこのレースが成立しているので、レースが大成功に終わっても1スポンサーの株価に大きく影響はしないと思います。しかしこれ言っちゃいけないのかもしれませんがクラッシュしまくって1台も完走できなかったらどうなっちゃうんでしょうかね???おそらくLiDARについては結構バッシングされるような気がしますが、そこはこのプロジェクトの参加者・企業のエンジニアリングと努力を信じるしかありませんね。

まもなく開催されるIAC、希望される方はこちらのページでライブ映像をご覧いただけますよ。

Indy Autonomous Challenge Live

オーロラの自動運転トラック

急に話が変わりますが、読者のハドウ氏からの情報でこちらのYouTube動画を教えていただきました。

ソースはテレ朝です

自動運転技術の開発企業でLiDARメーカー(メーカーを買収)でもあるアメリカのオーロラが2023年の運用を目指して自動運転トラックの試験走行を開始したというもの。これはただ単にトラックが自動運転で走れるようになるよ、ということではなく物流拠点間を自動運転のトラックでつなぐことで物流の世界を根底から変えることになる次世代のサービスを想定しています。この試験走行で使用されている車両は大型トラックの主力メーカーPaccard(Nasdaq:PCAR)。そういえばこのパッカーからつい先日Luminarへ品質担当副社長としてDebra Poppasが移籍したというニュースが出たばかりでした。

オーロラはこれまたSPAC上場を予定しており、11月4日にはAUR(現在はRTPY)のティッカーで公開されるとのこと。資金調達額は25億ドル、時価総額は110億ドルに達するそうですし、バックにはアドバイザーとしてセコイア・キャピタルなど、提携先にはトヨタ、ボルボ(トラック)、パッカーといった車両メーカーもありなかなか強力な体制を敷いてくるようですね。

前面上部の巨大なオーバーハングが特徴

オーロラのシステムはAurora Driverと名付けられており、2019年に買収したBlackmore sensorsが開発したFMCW LiDARを改良し、Fusionハードウェアとして製品化しています。

上の画像をご覧になるとわかるように、オーロラが目指すのは主にロジスティクスの一部を担う(自動運転による物流の仕組みが完成した際にはサービスに対してサブスクリプション制度も導入される模様)自動運転トラックの開発と、ライドヘイリングサービス用車両です。莫大な資金調達が予定通り実現すれば自動運転の最有力企業のひとつとなることは間違いないでしょうね。

YouTube動画のコメントを見ると、「日本も自動運転が普及すればやばい」というようなものがありました。おそらくドライバーがいらなくなり仕事が減る、と言いたいのだと思います。しかしいくつかの先進国ではトラックドライバーの数が不足して物流システムが根底から揺らいでおり、日本も例外ではないはずです。精密機器や高額品を扱うような経験豊富で信頼できるドライバーは別として、正直言って「ただ運転できるだけのドライバー」は自動運転に置き換えられてしかるべきではないでしょうか。運転手が足りないからと乱暴な運転を続けるドライバーや素行不良の従業員を使い続けなくてはならない事情も克服できる可能性が生まれますし、運転手が風邪を引くなどして急に人手が足りなくなるようなことも理屈上はなくなります。また、これらの動きが示しているのは運転手がいらなくなるという単純な流れではなく物流の仕組み自体が変革されるということでもあります。当面の動きとしては、高速道路の入口付近にある拠点の物流センター間を往復するだけになり、いきなり日本全国のあらゆる地域を自動運転トラックが走り回り運転手が不要になるということではないはずです。

自動運転の分野はますます面白くなってきますね。しかし最近この分野の記事ばかり書いてますからやっぱりブログタイトル、変えるべきでしょうかね~。

One thought on “Indy A Challenge(IAC)近づく”
  1. 記事拝見しました。インディのレース楽しみですね。オーロラのニュースも取り上げていただきありがとうございます。ライダー業界の競争が激しくなりそうですがそれも含めて楽しみたいと思います。

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