先週ルミナーのQ3が発表されました。少し前に「Q3の数字は特に影響しないだろう」と書きましたが少しの反応が見られたものの引き続き相場の悪さに引っ張られている感が継続しています。ルミナーに期待をかけておられる方は皆さんもうご覧になっていると思いますがこちらが決算発表時に毎回リリースされる次の四半期に向けたPR動画ですね。ずっと最初からこのシリーズを見てきた者としてはどんどん設備が充実し、量産体制が整っているのがわかってとても感慨深いです。

Rising Auto とVolvoがトピックス

決算については概ね順調に業績を拡大していると評価されているようですが、ソリューションの売上が昨年比で減少しているという指摘もあります。しかしルミナーの業績の中心はIrisの出荷に伴うものであり、ソリューション開発の売上の増減はQ2の発表時にCFOのトマス・フェニモアも「そういうことは普通にあるし業績にあまり関係ない」と前もって述べていたのでわたしが推測する限り気にするものではないだろうと思います。

動画の内容は要約すると次のような感じです。


Austin Russell, CEO, Luminar Technologies

わたしたちは今年末までに完全に量産の準備を整えることを目標に掲げ、それを達成しました。

オープニングはオースティン・ラッセル

中国No.1の自動車メーカーSAICはプレミアムEV、Rising Auto R7で次世代の安全性のためにルミナーIrisを統合しており、これにより最初の生産が既に(前倒しで)開始されています。今年の8月の時点で上海・広州・深圳の3都市においてルミナーのLiDARを含むRising Pilotを搭載したテスト車両が40万キロを無事故で走破しており実績はそれなりに積んできたと言えます。

SAICのブランド、Rising Auto はR7にLiDAR搭載
こんな感じでルーフに統合されています

いよいよAVの技術が研究開発から量産の実現へと前進し、消費者に届けられるという大きな転換点がやってきました。過去10年間、これを可能にするためにどれだけのことが行われてきたか、言葉で説明するのは難しいほどであり、会社としての全体的な進捗として、本当に特別なできごとだと思います。そして、この過程を共に歩んでくれたすべての人に、心から感謝します。

謝辞を述べるオースティンの頭の中はこういう感じでしょうか

量産を開始した今、わたしたちが目指すべきことを達成し、さまざまな自動車メーカーのパートナーとともに規模を拡大するためにしなければならないことがまだたくさんあります。ボルボは11月9日にEX90を発表する予定ですが、オプションやアップグレードではなく、すべての新車に標準装備される予定です。

明後日発表のEX90、もちろん全体像は見えません

ルミナーのIrisセンサーは、ボルボが「Invisible Shield」と呼ぶものに寄与しており、EX90は人間の能力を超え、暗闇の中でも、高速道路でも、長距離の物体を1センチメートル単位で極めて正確に見ることができます。LuminarLiDARは、ボルボの衝突事故ゼロへの道のり、そして自律運転の導入において重要な役割を果たすでしょう。ボルボは、機能面だけでなく美しいエクステリアデザインの両方において注意深く仕事をしてきました。その結果、次時代のクルマがどのようなものになるのか、その成果をお見せできることを誇りに思います。


T. Jon Mayer, VP of Exterior Design, Volvo Cars

ここ、スウェーデン第2の都市ヨーテボリにあるボルボ本社のデザインスタジオがわたしたちの仕事場です。

アメリカ企業なので英語表記ですが「ヨーテボリ」です

自動車のデザインは急速なスピードで進化しています。特に電動化、そして新しい技術の統合が必要になっています。わたしたちは、単なる馬力を争う世界から頭脳の世界へ、そしてよりプレミアムでラグジュアリーな体験を得るための実現に移行しつつあります。

ボルボでは、安全性、デザイン、テクノロジーの統合についてユニークなアプローチを行ってきましたが、まもなく登場するEX90は安全性の新しい基準をもたらし、ルミナーのLiDARが不可欠なキーコンポーネントとなりました

スカンジナビアン・デザインの原則のひとつは、「形は機能に従う」というものです。ですから、LiDARの搭載はまさにその方程式通りといえます。LiDARテクノロジーを最大限に活用するためには、できるだけ高い位置での視界、高速道路でも昼でも夜でも視界を確保する必要があると考えたのです。人間の視覚を超えた、より完全な視覚をクルマに与えることで、衝突ゼロだけでなく、アシストドライブ、そして最終的には自律走行につなげることができるのです。

形は機能に従う、だそうですよ

自律走行車の最初のコンセプトを見たときのことを振り返ってみると、車の四隅に巨大なボックスがあり、それが車から突き出たように取り付けられていました。

こんな不格好なメカをよくぞIrisレベルにダウンサイジングできたものです

一方ルミナー製品を見てみるといかに技術が急速に進歩したかがおわかりになると思います。ルーフにはもっと小さなLiDARが搭載されています。Luminarのユニットを載せ、その上にはカバーを付けてあります。このカバーは前面のエッジが丸みを帯びていて空気力学的に非常に優れているのが特徴です。平面図的にはLiDARの後ろに空気がきれいに流れてルーフに向かうようにティアドロップ形になっています。そのため車両全体のCD値に与える影響は非常に小さいのです。空気抵抗は航続距離と関係が深いため、CD値を改善することによりEX90の価値は高まります。

LiDARが取り付けられた上にティアドロップ形状のカバー

ルーフラインにLiDARを組み込んだやり方については非常にうまくできたと思っています。これはまさに自動車の安全性の象徴です。20世紀にシートベルトがそうであったように、21世紀はLiDARが自動車における安全性のアイコンのようなものです。

1959年にボルボが3点式シートベルトを開発、その後特許技術を無償提供

そして、このルミナーのテクノロジーを標準化したことは、自動車の安全性、カスタマーエクスペリエンス、ドライビングエクスペリエンスにとって重要な要素であり、次世代の交通を定義するようなものです。また今後何十年にもわたって自動車技術の大きな転換点として人々の生活に影響を与えるでしょう。

なかなかうまくデザイン処理していますね

最後に再びオースティン・ラッセル

さて、これからさらに次のフェーズに入っていくわけですが、皆さんを失望させることはなく、むしろわくわくさせるものになるはずです。わたしたちが今いる場所は、ウィンストン・チャーチルのシンプルな言葉に集約されます。

“これは終わりではない。終わりの始まりでもなく、始まりの終わりなのだ”

チャーチルを引用した真の意図とは?

シンプルとは程遠い、なんとも難解な引用でインタビューを終えています。これが大学の教授や作家から発せられた言葉なら「さすが小難しい言い回しをしよるわ」と聞き流すところですが、27歳のアメリカ人CEOが語っているところに驚きを感じませんか?

この“This is not the end. this is not the beginning of the end, but this is the end of the beginning”というセリフは、ロンメル率いる枢軸国の一角ドイツの精鋭部隊に苦戦していたウィンストン・チャーチルがアフリカ戦線での戦いに勝利を収め、さあこれから大勝利に向けて駒を進めていくぞ!という時に述べた言葉とされています。そしてご存知かとは思いますが「終わりの始まり」という表現の最も有名な一語でもあります。ではオースティンの引用の真意とは?

真の自律運転、安全性の確立のために、ルミナーは既にスタートを切っており最初の勝利を収めた。つまり最初のステージは成功裏に幕を閉じ、これからさらに大きな勝利を成し遂げるために前進するのだ、という決意を語りたかったのではないでしょうか。

Rising Auto はLiDARで先進性をアピール

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