今回の内容が実は最も重要でしたが思ったより回数を重ねてしまいました。これから書くことがなぜもっと注目されないのか不思議で仕方ないので取り上げようと思った次第です。

さて、前回の続きです。

マーク・デレーニ Goldman Sachs

フェニモアさんはバランスシートが健全であることを強調していますが、支出を抑制する必要についても話していますよね?また今後の自社株買いについてはどうなりますか?

トム・フェニモア Luminar

わたしが使った言葉は「規律を守り続けること」です。わたしたちは規律を守り、スタートアップのメンタリティーを維持しようとしてきました。大幅な投資の抑制はしておらずこれからも投資を続けますが、規律ある支出を維持するつもりです。これまでに支出した8,100万ドルで自社株買いの承認は完了しましたので、今後どうなるかは取締役会次第です。

オースティン・ラッセル Luminar

市場の混乱が続いているのですべての株を買い戻すというシナリオを考えたくなりますが、やはりバランスというものがありますからね。


今回のインタビューで最も重要なのはここ

デビッド・ケリー Jefferies

今年度は基本的に主要な顧客を獲得するという見通しですよね、日産とメルセデスは今年発表されたものですが、進捗状況はいかがですか?また下半期に向けて(既にこの時点で下半期の6分の1を終えている)ステップアップを確信させるようなことがありますか?

オースティン・ラッセル

今年既に公表しているのが日産とメルセデスですが、現状を考えると年内に少なくともあと3つの新規案件を発表できると考えています。既存・新規いずれの顧客についても非常に順調に進んでいます。

トム・フェニモア

いろいろな可能性はあるかもしれませんが(たとえば全車種に搭載するというような)、通常OEMにおいてはまず1つのプログラムから始めることになります。したがって、いかにして最初の1つ目のプログラムから複数のプログラムへ広げていくか、ということに重点を置いています。多くの場合、OEMは少量からスタート(検証)して、その後成功が明らかになってから大量に生産されるようになりますからね。

トム・フェニモア

(別の質問への回答)この1年半ほどで従業員数を大幅に増加させました。人数の問題だけでなく、人材の質も向上しています。今のような環境下では、多くの企業が採用計画を減速させると思われます。しかしわたしたちはこの機会をより高い品質の製品を提供するチャンスととらえています。人は増えるでしょうけども、既に多くのリソースを確保できているので、今後1年から1年半の間に会社の規模が2倍になるというようなことはないでしょう。


エマニュエル・ロズナー Deutsche Bank

既に発表されているいくつかの契約やパートナーシップについて、もう少し詳しくお聞きしたいと思います(言うわけないだろうけど)。メルセデスとのパートナーシップですが、今年も半分を過ぎましたので具体的な時期や量など何か教えていただけますか。あとは中国でのECARXについてですね。

トム・フェニモア

まずECARXについてですが、ECARXとはGeely(吉利)ファミリーの一員であり、わたしたちはECARXを主に中国におけるGeelyブランドに対するテクノロジーサプライヤー、テクノロジーゲートウェイとみなしています。ご存知のように、ルミナーは関連するボルボやポールスターなど、国際的なブランドと仕事をしています。

中国ビジネスについては、SAICとだけでなくGeelyのいくつかのブランドと協力する機会があると見ています。そのためECARXと提携し、ルミナーの技術をECARXの技術と統合することでより広範囲な車両に採用される可能性が高まります。これがECARXとの戦略的パートナーシップの目的です。ルミナーは1,500万ドルを投資することになっており、その後株式公開のプロセスの一環としても株式交換の形で出資する予定です。

メルセデスとは今年の初めに提携を発表したばかりです。両社は素晴らしい関係を築いており、今後も進展していくでしょう。メルセデスは現行のプラットフォームで、ヴァレオのプラットフォームとLiDARによって段階的にレベル3の自律性を達成しようとしています。わたしたちが提供するのは、その次の世代のプラットフォームについてです。積極的な安全性と高速道路の経済性を実現し、基本的な交通渋滞のパイロット機能を超えた車両を実現します。

彼らは最高の基準、優れた能力を持っていますので、このコラボレーションはルミナーとメルセデスの両社を次のレベルへと導く素晴らしいものだと思います。

エマニュエル・ロズナー Deutsche Bank

最近ヨーロッパの大手OEMがかなり大規模なLiDARビジネスを別のメーカーに依頼したと聞いています。なぜルミナーではないのでしょうか。価格の問題?機能の問題でしょうか?※これはイノビズがVWグループからの40億ドルの受注を獲得したという案件だと思われます。なぜVWはルミナーでなくイノビズを選んだのか、というお話しです

オースティン・ラッセル

低速域における渋滞時の自律性を実現するためにルミナーレベルの機能を必ずしも必要とはしません。メルセデスボルボSAICポールスターダイムラートラックなどが行っているような、次世代のプロアクティブセーフティやハイウェイオートノミーといった機能向上について実現させようとするとわたしたちの仕事になるわけです。

Q3ではなく2022通期のガイダンスが重要

概ね書いておく必要があるのはこの程度でしょう。あとはエヌビディアとの関係性について質問があり、Nvidiaとわたしたちは似ているがNvidiaはチップ販売のためにソフトウェア開発を行い、Luminarはプロアクティブセーフティーのためにソフトウェア開発を進めている、というような話しが続きます。

おそらくですが11月に発表されるであろうQ3についても量産化に向けて順調に進んでいます、というような説明になるのではないかと思いますし、ソフトウェア開発の売上はブレがあると説明されているので数字の方も不確定要素が大きいです。これまでの例から考えると新規顧客の発表については既に準備が進んでいて、あと4ヶ月の間にオースティン・ラッセルの言葉を信じるとすればあと3つまたはそれ以上の新規顧客に関するニュースが随時公表されることになるでしょう。となれば気になるのはパートナー未発表またはLiDAR採用を公表していないメーカーの動向です。

・レクサス(トヨタ+デンソーと棲み分け?)
・ステランティス(やはりBMWに準じる?)
・ジャガー・ランドローバー(ルミナーとの接点は確認済み)
(11月22日追記)NvidiaのDrive Hyperion 8アーキテクチャーを採用するため2025年~搭載予定
・マツダ(現行ADASはカメラ+レーダー)

(追記:2023/1/13)StellantisはValeo Scalaの次世代機で2024年~L3対応予定、車種やブランドは明らかになっていない)

レクサスはずっとルミナーのYouTubeチャンネルで主役級の扱いですから期待はしますが、日産がルミナーを採用していること、そしてなんと言っても世界のデンソーががっちり待ち構えていますからなんとも言えないところではあります。レクサスとトヨタのサプライヤーが別になる可能性もなきにしもあらず?でしょうか。ステランティスはBMWと歩調を合わせているもののイノビズを採用しますかね?マツダは非常に意味ありげにルミナーの動画に登場していますので気になっていました。マツダの場合コスト面は問題になるかもしれません。ちょっとこのあたり全てを調べる時間もありませんので、ご存じの方がいらっしゃったら教えていただければと思います。

おわりに

これまで再三書いていることですが、「人が運転する代わりにシステムが自動運転してくれて楽になるってそんなこと必要ある?それが実現するなんてまだまだ先の、未来の話じゃないの?」と多くの人が考えているはずです。こんな風に自動運転、自律運転というものについてピンとこないのでLiDARビジネスは一般にほとんど理解されていないのが現状です。ルミナーが用意したLiDAR搭載レクサスとテスラの自動ブレーキについて検証した動画を見て多くの人が「やっぱりテスラよりトヨタの方がすごいじゃん」などと頓珍漢なことを言っているのもその表れでしょう。

しかし、人間の運転をシステムに置き換えることによって楽になるというような次元のお話しではなく、もはやルミナーのような自律性を搭載しなければならないほど交通事故の実態というのは極めて深刻なのです。アメリカの交通事故死の件は少し前に書きましたが、最終的に運転しているドライバーよりも歩行者や自転車に乗っている人の方が危険にさらされていて交通事故での死亡率が高いことを考えると、ドライバーを楽にさせるためではなく車の外にいる歩行者などを守るためにどんな犠牲を払ってでもADASや自律運転車両を増やさなければならないと言えるのです。わたしはこの点でプロアクティブセーフティーを提唱するオースティン・ラッセルとルミナー・テクノロジーズに大きな期待を持っています。

その昔、中堅上場商社の不動産部門にいた時、通勤のため車を走らせていましたらすぐ前を走っていた車がなぜかふらついてそのまま歩道に乗り上げ並木に正面衝突しました。慌てて車を停めて運転席に走り、パニックになっている年配のご主人を外に出してから助手席でぐったりしている奥さんらしき人に声をかけましたが額に傷を負って意識がなく、結局その時点でほぼ即死していたことがわかりました。衝突時のスピードはわずかに40キロほどで、シートベルトはされていました。あの方々も、適切なシステムがあれば悲しい結果にならなかったという思いがずっと頭の中にあります。運転している人も、同乗者も、歩行者も、簡単な事故で亡くなることがあるというのが自動車の怖さです。

いつになるかわかりませんがテスラのFSD検証についての記事が書きかけになっていますのでそこで解説したいと思います。

2 thoughts on “Q2後のインタビュー内容より要約(完結)”
  1. いつも楽しく読ませていただいています。来月にはIris搭載のPolestar 3がデビューするので、今後の市場からの反響が、今からとても楽しみです。個人的には、VolvoのConcept Rechargeは、ルーフトップが先鋭的で好みが分かれるかもしれないと思っていたのですが、Polestar 3 のデザインは、teaser videoで見る限り、特徴的なルーフトップが車全体のデザインと調和し、上質で洗練された車に進化したという印象を受けました。良い車に仕上がっていて、とても人気が出るのではと期待してしまいます。

  2. コメントありがとうございます、ポールスター3はほんっとに楽しみです、1が終売して選択肢がないのでいよいよ大きな起爆剤が登場ですね。ここは他のメーカーのどれとも似ていない、洗練された独自のデザイン言語を持っているというところが非常に個性的で魅力たっぷりです。成功は約束されているように思いますしテスラと戦えるメーカーに成長してほしいですね。

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