モトリー・フールがリリースしたルミナー・テクノロジーズの分析に関する動画はなかなか本質をうまくまとめていると思います。
先日、2024年Q1の収益報告が出ました。今年前半はボルボ向けの出荷による受注から収益への転換が行われていませんので、後半になるまでポジティブなサプライズは期待できません。既に1ヶ月半が経過したQ2の収益状況もももちろん同様になるはずです。
さてこの動画で説明されていることをおおまかにまとめてみましょう。
ポジティブな部分
EX90向けの出荷が始まり、いよいよルミナーの数十億ドルもの受注が収益に転換し始めるスタート地点にやってきました。彼らは多くの注文を受けていると言っていましたが、2024年後半にはこれまでの何倍もの出荷が実行に移され、今後爆発的な成長へとつながることでしょう。投資家にとっても喜ばしいことであるに違いありません。
爆発的な収益増加がただちに投資の成功を保証するわけではなく、今後のロードマップを達成し続けるには困難な道のりが予想されます。しかし注文が目の前に控えているというのは素晴らしいことで、ルミナーは注文に対する納品を実行し続ける必要があります。2024年に達成されるのはこれまでの受注に対しわずか2%程度ですが、2025年にはさらに加速していくことでしょう。一方で受注そのものも増加する可能性があります。EX90向けの納品は始まりであり、EV以外にもICE向け車両への搭載も計画されているということです。
NHTSAの法制度化について
NHTSAにより最終的な規格が公表されたことはルミナーにとって素晴らしいニュースでした。ただ、EVが多くの投資家からの期待を集め、政府もEV化を促進するような計画で後押ししたのに、その後追い風となるはずの規制や法律への取り組みを撤回したり、延期したり緩和したりしてきたように、今回義務付けられることが決まったAEBの基準についても同じことが言えます。NHTSAが「やっぱり2029年じゃなくて5年延長して2034年から義務付けにしましょう」などとあっさり変更するようなことも考えられます。民主党政権が共和党政権に変わればガラッと風向きが変わるかもしれません。政府が決めたことだから絶対間違いない、などと考えるのはやめたほうがいいでしょうね。
財務面への指摘
ルミナーのビジネスの見通しはかなり期待に満ちたものですが、財務面での脆弱さにも目を向ける必要があります。現金の残高は非常に重要で、持続可能な状態に成長するまでの大きな鍵になりますので、注意深く見守っておくべきでしょう。彼らは収益の6倍以上もの損失を出しているのです。今後収益は急増するでしょうが、コストとのバランスをとり利益を生み出さねばなりません。ただ、過去の同時期に比べて営業損失は4200万ドル改善しています。彼らは既に人員削減や製造委託といった合理化、具体的なコストカットの計画を打ち出していますので、大幅な収益の伸びに応じてコストが適切に削減され、利益を生み出すことが示されれば、次の1~2四半期後にはこの銘柄に対する評価がアップグレードされる可能性があります。
結論
「今はもう少し事業の進展を見守るべき」
というニュアンスですね。もちろん、なるべく不要なリスクは軽減しましょうという観点からのコメントですので、これを見て投資するべきではないと判断する人もいれば、こういう時だからこそ自分はリスクを取りに行くというタイプの人もいることでしょう。人それぞれの考え方だと思います。
社員数がいつの間にか400人から100人増えて500名になっており、人件費の高騰が大きな懸念材料であることには気づいていました。リストラされる社員には気の毒というべきでしょうけども、適切な時期に適切な手段を講じたと思っています。事業のスピードを最優先するためには各ポジションに一気に人材を送り込んでおくという割り切った手法もやむを得ないのでしょう。Q2またはQ3の収益報告でコストがどう変化しているのかをよく見ておきましょう。
※6月11日・・・リストラは全体の20%で140名、逆算すると約700名の従業員がいたことになります。ということで500名以上の従業員が残るみたいです