日本もアメリカも株高で、買っている人はみなさんウハウハでしょうね。わたしは最も重要だったCRMが急上昇、無事指値をぶち抜き5ドル上積みで約定。尊敬する経営者マーク・ベニオフには感謝しかありません。気づかない内にすっかり存在を忘れていたiDeCoもまだまだ先が長いのでなんとも言えませんが今のところ爆益が出ています。国の制度がいい方向に働いているのではないでしょうか。「株高は株を買っている人にしかメリットがない!」と文句を言っている方は自分が何を言っているかわかっていないのでしょう。
先日、ルミナー・テクノロジーズの2023年通期決算発表が行われました。結果としてはあらかじめ予想していた通り、特筆すべきところはなにもない内容でしたけれども、徐々に事業の全体像がより明らかになってきたのに加えて、どの時点で会社の急成長が期待できるのかが見えてきたと思います。もちろん、投資家にとって結果が大事であり、今の株価については最悪の状況と言えるでしょう。個人的な考えとしては、資金に余裕があってじっくり待てるなら株価の安い内に買い進めるのもいいでしょうけど、もはや何らかの上昇のきっかけを確認してからの順張りでいいと思います。
売上高
ちょうど1年前に書いた記事の中で取り上げた過去のガイダンスはこのようなものでした。
↓↓↓計画↓↓↓※参考:右は2020年決算発表時の予想売上
2023年3月6日の記事より
2023年期末 8000万ドル(2倍)1億2400万ドル
2024年期末 1億6000万ドル(4倍)4億1800万ドル
2025年期末 3億2000万ドル(8倍)8億3700万ドル
2026年期末 6億4000万ドル(16倍)
2027年期末 12億8000万ドル(32倍)
そして発表された2023年の通期売上高ですが、ガイダンスの8000万ドルに対して結果は6978万ドル(日本円で約105億円)、およそ87%の達成率となりました。となると、仮に2024年以降の収益が去年の目論見通り前年の2倍で成長し続けるとして、4期分の売上高はこのようになります。
2024年期末 1億4000万ドル(2倍)
2025年期末 2億8000万ドル(4倍)
2026年期末 5億6000万ドル(8倍)
2027年期末 11億2000万ドル(16倍)
※数字が見にくくなるので2023年の売上高を7000万ドルとして計算
いかがでしょうか。前年の計画に対して大きく見劣りすると思う方がおられますか?2020年に発表された目標からは半年~1年ほど計画がずれ込んでいるようですが、わたしは1年前に引き続き、2025年の売上が非常に重要だと思っています。残念ながら期待していたポイントである2025年3億ドル超えというのはかなり厳しくなっているようですけども、1億ドルを下回る見栄えのしない数字とは大きく異なる株価へのインパクトがあるのではと考えます。ただ、とりあえずはっきりしなければならないのは、SPACで上場した後のプレミアム感は数年で完全に剥がれ落ちた状態で、今後は正当に収益内容が重要視されるようになり、たとえばトヨタやテスラがルミナーの採用を決定!というようなサプライズニュースがない限り、もう期待感だけで時価総額が大きく膨らむことはないでしょう。
それから、実際にCEOとCFOが度々口にしているように、自動車業界におけるこの分野の見積もりがあらゆる面で相当難しいのでしょうね。これまで、完成品としての自動車はIT分野でのハイテク(製造側ではなくエンドユーザー側)とはほとんど無縁でした。AI云々と言っている時代になっても、たとえばフォルクスワーゲングループでさえシステム面での開発が致命的なほど遅れに遅れているというのは自前での開発の難しさを表していると思います。一方で、デジタルテクノロジー分野の先端企業が自動車の分野に簡単に踏み込めるわけでもない、ということはアップルの自動車開発の状況を見ればわかりますね。つまり、自動車メーカー(OEM)と、テクノロジーを商品にする企業との融合にはギャップがまだ大きく立ちはだかっていると言えるかもしれません。
付け加えておきますと、ルミナーは2022会計年度終了時に「2023年の収益については、メキシコの生産体制が早く進めば1億ドルを超える上振れもあり得る」としていました。今回、フェニモアが「生産設備の整備に思ったより費用がかかった」と言及しているので、結果として前倒しの収益化は進んでおらず、やはり見積もりの難しさが影響していると思われます。
特に注目した点のまとめ
売上高などの数字を見て、その他詳しい情報を調べる必要さえないなと思っていたものの、オースティン・ラッセルとトム・フェニモアの説明からは「おっ」と思える部分がありましたので少し抜き出してみたいと思います。
市場の評価については(ウォールストリート)実情と乖離していてかなりフラストレーションがある。しかしルミナーは株主に長期的な価値を提供できるように運営しており、Nvidiaやテスラ、モービルアイをベンチマークとしてビジネスを実行している。
モービルアイのLiDAR開発中止については聞いているが詳しいコメントはできない。この分野は簡単ではないので、過小評価している人々が正しく理解し始めるとルミナーにとっての利益は大きくなるだろう。
受注の見積もりに関して。2023年中に獲得する予定だった見積額が減少しているのは、実際の搭載率について見直ししたのと、年内に予定していたものの一部が2024年に延期されたことから。どのような計算方法を取るかは基準というものがなく、計算方法によっては大きく見積額が変わるが今後はオーダーブックの計算について標準化していきたい。
現在、上位20社の自動車メーカーの80%が、2030年までにいずれかのLiDAR製品の搭載を計画しており、生産車両への実装ロードマップが存在する。残り15%は見極め中で、あとの5%はそれ以外(LiDARが絶対いらないというのはパガーニのような特殊な車両か、あるいはメーカーとして考えを公表していないだけ)。自動車業界では、新しい技術が最初に導入されてから最終的に全ての車両で標準化されるのにだいたい20年かかっているが、LiDARについては他の技術に比べて相当速いスピードで普及すると見ている。時間はかかるが実現できたときの経済効果は莫大なものになるだろう。
ルミナー製品はEV専用ではなく、パワートレインを限定していない。
2024年はオーダーブックがさらに大幅な成長を遂げるだろう。そして今年は既存のオーダーが収益に移行する年となる。とりわけ、ボルボがEX90の生産を数ヶ月内に開始するのは非常に重要。生産体制の本格化は今後数週間で実現する。
次世代のLiDARについては4月23日のルミナーデイで詳しく説明する。
直近の最大の目標はボルボのSOP、2023のQ4ではそのために必要な支出があれば短期的な犠牲を払ってでも実行を優先してきたが、生産開始に向けて徐々にコストを抑制していくつもりで、組織の合理化も進めていく。
日産のプロジェクトは前進し続けていて、ルミナーとは将来本格的な生産に移行するという開発契約を締結しており、その実現にはかなり自信を持っている。以前(前四半期)の説明時からは、開発契約が次の段階に既に移行しているが、現時点では具体的なオーダーはゼロ。最終的には日産側が計画に基づいて決定するので詳細事項についてはこちら側のコントロール外であるが、間もなく開始されるのではと考えている。作業はIrisで進めており、LiDAR単体だけではない未来について話し合っているところである。
今後の資金需要(調達)については、ボルボのSOPの状況を見据えつつ判断する。
5~6年前に200社を数えたLiDAR開発は、今では片手で数える程度しか残っていない。ルミナーとしては、もう少し安易に採用を促す手段はあるが、性能や品質面で決して妥協をしてこなかった(※さりげなくダイムラートラックへのAEVAの採用をチクリ)。将来的にOEMが車両への搭載を真剣に検討しているLiDAR企業はほんの一握りしかないと思うし、高速域での安全性について考えると、ルミナー製品を実装する必要があるだろう。
Geelyグループ、ロータスでの採用について質問があったが、それについてこちらから発表したことはない。ボルボの次はPolestar3、その後はメルセデス・ベンツ、そしてその次に何が来るかは適切な時期に公表する(※この発言は未公表のOEMについてのことでしょう)。しかし、現実として既に21以上の車両と主要プログラム、合計25を獲得していて、そのほとんどがこれから36ヶ月以内に発売されることになる。この内最も難しいのが最初のもの、ボルボEX90のSOPで、Q2に数千台のユニット生産が予想されている。※仮に3,000台として300万ドルの収益にしかならないが、XC90がグローバルで月間8,000台程度売れていることを考えると、量産後年間10万台以上の生産も考えられる。LiDARを標準装備したEX90が10万台出荷されるとLiDARの売上は1億ドルとなり、2025年予算の半分程度をEX90の1車種だけで達成できる見込み(今年はQ2開始予定なので台数は絞られる)。ルミナーが生産設備の増強を急いできた事実から考えると、結構早い段階で数十万台の出荷が始まるはず。(6月6日6時6分:ボルボのQ1レポートを見るとXC90の販売台数が全然違っていたのでオレンジで記載の数字を修正しました。なおこのコメント部分は全て仮定のものです)
多くのラインナップが控えているので、今後の36ヶ月は非常に忙しくなるだろう。
※子会社のルミナー・セミコンダクターについても言及があったが、ボルボ向け?の開発を優先したためリソースが割かれていて、収益貢献はまだ先になる模様。
※は筆者コメント
要約※個人の見解です
上の要約の内、これは!と注目した部分は太字にしてあります。ボルボのSOPがうまくいけば他のOEMも自信を持ってプロジェクトを次の段階に進められるし、投資についても次の段階に進めることができる、そして3年間の生産計画は目前に迫っている。ということで次の極めて大きな一歩がすぐそこにやってきていますね。収益が順調に上がりだしたら、上にも書いているように利益を増やすためのコスト削減が大きな焦点になることでしょう。
気になるのがメルセデス・ベンツの次の何かは時期が来れば公表すると述べた部分です。もしPolestar4など既に発表済みの車種なら名前を挙げても問題ないはずですが、それをあえてぼかしているということは特定の車両ではなく新しいOEMだろうという推測につながります。
2024年から2027年にかけては収益が急激に上昇することが見込まれます。まずは経営陣が述べているようにボルボの生産開始を、そしてルミナーデイを楽しみにしたいところです。