テスラPure Visionで自動運転を成功させることができるのか、それとも松葉杖だとかアホのやることとまで言われても結局カメラをサポートする他のセンサーが必要なのか、テスラフリークとその他のテクノロジーを支持する人々の間で大きな論争が続いています。そこでついに、

イーロン・マスク「ずいぶん待たせたが、FSD Beta 10.2をリリースした。これが我々の答えだ!」

リリースノートには「運転の視覚化が改善され、完全な自動運転機能より適切にサポートされるようになった」と書かれていますが、それでは次のYouTube動画をご覧ください。心配していたとおりになってますけど???

10.2にアップデート後もFSDに任せっきりにできないことだけは覚えておいてください

10分少々の動画を見ていただければ全てを理解することができますが、それさえもめんどくさいという多くの皆様のために要点のみ書いておきましょう。

高架下へ左折する道を見つけられていない

まずは1:37からのシーン。信号待ちから高架下の線路が走っている方向へ左折するところ。

左折直前の信号待ち、前方には横切るように線路がある
明らかに行き先を見失いふらつくのをドライバーが修正

このシーンではテスラが左折するべき道路を明らかに見失っている様子が映っています。気になるのは日差しが強いところから映像では真っ暗に見える高架下の影に入ろうとしているところで、カメラには道路がはっきりと見えていないのではないかと思われます。後続車は画像にあるように直進する車、そしてもう一台はテスラに続いて左折するところでしたからドライバーは安全のため自ら強制的に左へ曲がって行きました。

直進の交差点でなぜか左へ曲がりかける

次は4:55から。

直進するべき交差点でナビはやや左に行きたがっている模様
ナビの進行方向を見ると左に曲がりながらまっすぐ行きたかったようです

交差点に侵入したテスラはグイグイ左へ曲がろうとするも、ドライバーはまたもやハンドルを修正して直進へ復帰することができました。ナビの進行方向が一旦少し左に曲がっているのが見えます。

金属製のポールにあやうく正面衝突

そして最も危険なシーンが5:40からの右折するシーン。手に汗握る様子がわかります。

右折のサインが出ており右へ曲がっていく
右のレーンは線路、ふらついたあげく信号機の金属ポールにあわや衝突

右へ曲がってみると右端のレーンに線路があり、曲がっている途中にシステムが混乱した様子があります。問題はこちらのシーンでもやはり強い日差しから日陰に、しかもまだらのような木陰に入ろうとした瞬間に車両がふらついているところです。ブレーキを掛けた様子もなく、動画を見るとかなり危険な状況でした。

やっぱり見えていないのではないか

このあと動画の投稿者は「人間の目から見ても右端に線路があり進入してはいけないというとっさの判断は難しかった、だからそこはきちんと見分けていたとは思う」とテスラのシステムを擁護しています。しかし、1番目と3番目の事例を考えると、光線の具合なのか影の具合なのかはなんとも言えませんが、システムに道路または物体(金属製ポール)が「見えていない」ように思えます。テスラの挙動は確かに迷ってはいますが判断しようとはしていました。ところがピュアビジョンはピュアであるがゆえに闇を見ようとしなかったのかもしれないというのがわたしの推測です。とてもつまらない表現で恐縮ですが、ピュアビジョンの弱点として指摘されていた課題でもあります。

2番目に書いた「直進するべきところで左折しそうになった」シーン、これももちろん過小評価するべきではありませんが、そもそも見えていない(かもしれない)という問題から比較すればそこまで根本的、致命的な欠点ではありません。

今のところ、ではあるが松葉杖が必要だと思いますが

LiDARに依存するようなシステムに自動運転の未来はない、と言い切ってしまったイーロン・マスクですがわずか10分ほどの動画の中で2回もこのような危険な現象が存在したことを考えると、わたしごときが繰り返し繰り返し指摘している通り、オースティン・ラッセルの言う「最後の1%が安全を担保する」という考え方が正解ではないでしょうかね。

この動画の真偽の程も正確にはわかりませんし、この動画が事実だったとしてテスラの価値を曇らせるようなことはないとわたしは信じていますけれども、LiDARを推進する多くの企業、そしてどこよりもルミナー・テクノロジーズが推奨する「安全が最優先される」という哲学をテスラはもう少し考えるべきではないかと思います。もちろんFSDの最新バージョンがよく見えるようになったことをうたっているのではないとしてもですよ。

蛇足ですが「テスラがやろうとしているのは人間が見ているようにビジョンを向上させることだ」という考え方に対し、「人間の知覚なんてたいしたことはない、テスラのそれは人間をはるかに超えたシステムだ!」というような極端な意見を度々目にするのですが、あなたは前にも両側にも後ろにも、何十個もの目で四方八方から近づくあらゆるものを常に見続け、超音波やレーダーで周囲の物体をいちいち捕捉して安全性を判断するような毎日に耐えられますか?と問いかけたいです。

10月18日追加:Beta 10.2について他にもわかりやすい検証動画を見つけたので追加しました。こちらの動画では明らかに「見えていない」という致命的なものはないように思いますが何度もレーンを外れたりブレーキが遅れたりを繰り返しており、結構FSDに頼るのは怖いと思いますよ。テスラで大いに儲けさせていただいてて文句を言うのもなんなんですが、FSDという名称が問題です。

昨日投稿されたこれも気になる写真ですね。

残念ながらこちらの方は回避できなかった模様。ただFSDによるものかどうかは不明。
6 thoughts on “テスラのFSD Beta 10.2、ベータはやっぱりベータ”
  1. こんにちは。今回の記事も大変興味深い内容でした。
    さて、また次回以降の記事でvelodyneの内紛問題のその後やあれからいくつか新しい契約を獲得しているようなので、その辺りを取り上げて頂けると有り難いです。また、Lucid MotorsはLuminarのセンサーを採用しているのでしょうか?Lucidの車はなかなか見た目がいいと個人的には思います。

    1. こんにちは!ベロダインについて忘れている訳ではないんですよ、実は最近またも買い増ししたぐらいですから。ただ情報をまとめようにもベロダインの発信力がどうも今ひとつで記事にしにくくて悩ましく思っています。

      Lucid AirはDream DriveでどのLiDARを使っているか明確にしていませんしヒントも少ないですね、ValeoのScalaではないかと言われていますがエクステリアを見ると製品版のScalaが収まるスペースはなく、LuminarのIrisに見えるんですけどね。それでもこの辺はそろそろ明らかになりますよ。

      1. そうなんですね!ベロダインの株価はルミナー同様にボロボロにやられてますが、好機と捉えて私も買い増ししています。それでは、また次回以降の投稿を楽しみにさせていただきます。

  2. 気になる動画があったので共有させてください!最初の所でアップになるライダーセンサーがベロダインのものにめちゃくちゃ似ています。似てるだけでこれはオーロラ製でしょうか!?
    https://youtu.be/JBvOH5S8lMQ

    1. これね、わたしも気になってたんですよ!ちょっと調べてみたことがあるので書いてみようかと思ってます。ありがとうございます✨

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