テスラの自動運転に関する疑念が高まる今、コンシューマー・リポートが過去(2020年9月)に書いた記事が大変興味深いものとなっているのでご紹介したいと思います。いろいろと綿密な調査内容が記されているのでわかりやすくかなり簡単に要約したものになります。
Tesla’s ‘Full Self-Driving Capability’ Falls Short of Its Name
テスト結果の要約
- 自動駐車は精度に難あり
- サモンの用途はなに?
- スマートサモンでの動作には危うさが
- オートパイロットの安定性に課題
- 信号機、一時停止のサインの見落とし(これは危険)
という結果が報告されています。うーん、こうやって見てみるとなんとなく予想していたとおりのような気もしますが実際のテストはどのようなものだったのでしょうか。機能別にまとめてみました。
自動駐車の精度
テスラの掲げる自動駐車機能とは、パーキングロットのそばでスクリーン中央にポップアップ表示されるPのサインをタップし、シフトセレクターをリバースにすると完全自動で駐車してくれるというもの。
この機能で問題になったのが、駐車スペースがそこにあるのに認識しないため自動で停めたくても停められないという現象。自動駐車を強制発動することはできないため、システムが認識してくれない限り使い物にならないというわけです。また、自動で駐車はしてくれるものの枠線の中に収まらず斜めに停めてしまうこともあったとのこと。
サモン
スマホアプリまたはキーを操作して狭い場所への出し入れができるというサモンについては、たとえば隙間がなく乗り降りする際にドアが開けにくい時などに役立つと推測されるが、実際に隙間のないスペースにあるテスラの車両はセンサーがうまく働かず壁や他の車に接触する危険性があり、ユーザーが注意深く見張っている必要があると指摘されています。
スマートサモン
スマートサモンを使えば、駐車している車をスマホで指示した自分のところまで文字通り召喚できるという未来の世界が実現します。ところが実際に召喚してみると、まっすぐ自分のところにやって来るはずがありえないほど遠回りしてきたり、傾斜路で立ち往生してしまったりと召喚途中で用事を忘れたうっかりものの召使いになってしまうことがあるほか、停止線を見逃して突然横道に右左折するような危険な挙動もみられました。
オートパイロット(Beta)の安定性
ハイウェイの出口を通り過ぎてしまう、追い越し車線を延々と走行したままになる、交通量の多い道路で突如システムが停止してしまう、といった結果が出ているそうですがこれも安全性への疑いとなる重大な問題です。
信号機と一旦停止の自動認識(Beta)
アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシスト機能がセットになって働くこの仕組は最新のパッケージで提供されたものですが、青信号で停車してしまう、一旦停止の標識を通り過ぎて停車する、ラウンドアバウトでシステムが混乱してしまうなど、非常に危険な経験となったようです。確かにこれで自動運転に任せっきりにするのは難しそうですね。
というわけで、いろいろ調べてみると完全自動運転という名の不完全システムが提供されていましたよ、という調査結果には納得せざるを得ないでしょう。ここで本質的に問題になっているのはテスラのシステムが不完全であるということよりは、FSDと謳ってしまっているだけにユーザーが過信してしまう可能性があるのは大変危険で、実際にはかなり注意深くドライバーが関与しないといけないのが現状である、という注意喚起ですね。
さてこの調査結果で指摘されていることがテスラのシステムアップデートで解決される問題なのか、またはたとえばLiDARの採用でそれぞれの機能の精度や安定性が向上することになるのか、そのあたりはなんとも言えないところです。テスラはコンシューマー・リポートから送られた調査結果に基づく質問に対し回答しなかったということですが、交通安全の観点からなんらかの見直しをしてほしいと強く願います。
以前も書いていますがわたし自身テスラの株を少なからず買っていますのでテスラ製品の魅力が向上し、さらなる株高に進んでいくことを望んでいます。今後も間違いなくいろんな意味で目が離せない企業、銘柄のひとつですね。
※この記事は情報が古いもので今の事情が異なるのではという見方もあるかもしれませんが少なくとも今年の5月19日に更新されている時点で状況は変わっていないと考えられます。